弘済 みらい園・のぞみ園の日常を綴ります。
暮らしに役立つ心理学のお話③
2022年03月21日(月曜日)
こんにちは。
暮らしに役立つ心理学のお話、第3回目です。
2回目は、『自我』についてお話しをしました。
子どもが泣いてる時に、「おなかすいたね」「いたいね」などと声をかけながらお世話をすると、子どもの感情調整力や現実に適応していく力、自我の力を育てているというお話しでしたね。
3回目は、『イヤイヤ期』についてのお話しです。
1、2回目で学んできたように、養育者との間で愛着関係ができて、自我が育ってくると、2歳くらいから、子どもは親に反抗しはじめますね。
手伝ってあげようと思って手を貸すと、「ダメ!自分でやる!」と主張する。
この時期の子どもは、なんでも「自分でやる」と言ったり、親の言ったことには「いや」と反抗するというだけではない難しさがあるのではないでしょうか。
この時期の子どもにどう関わればいいのかについて、一緒に考えていきましょう。
乳幼児の母子分離の過程についての理論を創った、マーガレット・マーラーという精神分析家がいます。
マーラーは、イヤイヤ期が始まる頃(生後15か月くらいから24カ月くらいの時期)を再接近期と呼んで、この時期は、親から離れて自立していこうとする反面、親からの愛情を失うことを恐れて見捨てられ不安が高まり、ふたたび親にまとわりついてくる時期である言っています。
この時期の子どもは、お母さんが手伝おうとすると、「自分でやる」と言う。
自分でやってはみるけどできないと、「お母さんが手伝ってくれないからできない」と怒り始める。
なんでも自分でしたい時期と思っていると、できるようになっていることも「できない、お母さんやって」と甘えてくる。
お母さんとしては、子どもがどうしたいのか分からなくなる。
「もう勝手にどうぞ」と突き放したくなったり、甘えを受け入れていたら自立できなくなるんじゃないかと心配になったりもされるのではないでしょうか。
この難しい時期の子どもと付き合うことは、子どものことがよく分からなくて不安になったり、将来が心配になったり、手伝っても手伝わなくても怒るし、どうしてあげればいいのか大いに悩まれることと思います。
実は、子どもはわがままでやっているわけではなくて、これらの行動にはちゃんと意味があります。
子どもが心の中で何を頑張っているのか、それを先ほどのマーラーという人は、『自立したい気持ち』と『依存したい気もち』で葛藤していると言っています。
お母さんに手伝ってもらわずに自分で全部やりたい、自由にやりたい、という気持ちと、お母さんから離れて好きにやっているとお母さんから見捨てられるのではないかという不安との間で揺れ動いているのです。
ではどう関わればいいかというと、マーラーは、『自立したい気持ちと依存したい気持ちの両方を満たしてあげながら、そっと自立の方に背中を押してあげたらいい』と言っています。
子どもが、自分でやれたことは「できたね」と認めてあげる。
できることもやってと言ってきたときは、「たまには甘えたくなるときもあるね」と言って受け入れてあげる。
こんなふうに、どっちの気持ちも満たしてあげることによって、子どもは少しずつ、自立に向かっていくと言われています。
マーラーという人がいうようなこんなすばらしい関わり、言葉でいうほど簡単ではないし、いつもはできないですよね。
怒ったり、突き放してしまうこともありますよね。
そんな時があってもいいと思います。ここまで見てきたように、できることができないと言って甘えてきても大丈夫、自立と依存の間を揺れ動きながら自立に向かっていること、十分に依存できた経験があって、自立に向かえるというこのプロセスを知っていると、少し子どもへの関わりに心のゆとりが生まれるのではないでしょうか。
第3回の『イヤイヤ期』のお話はここまでです。
次は第4回の最終回でまたお会いしましょう!(^^)!
(平岡)