社会福祉法人みおつくし福祉会 弘済みらい園 弘済のぞみ園

日記

弘済 みらい園・のぞみ園の日常を綴ります。

暮らしに役立つ「自律神経のお話④」

2021年12月13日(月曜日)

前回までのおさらいです。

 

自律神経は3つに分かれます。「安全とつながり」の神経、

「戦うか逃げるか」の神経、「凍りつき」の神経です。

「安全とつながり」の神経が働いていれば①安全運転タイプ、

「戦うか逃げるか」の神経が働きやすければ「高速運転タイプ」、

「凍りつき」の神経が働きやすければ③「低速運転タイプ」です。

④不規則運転タイプは、「戦うか逃げるか」の神経と「凍りつき」の神経が

交互に、もしくは同時に働いている状態です。

 

こういった特徴を私たちは性格として捉えがちですが、実際には自律神経の状態です。

そしてそれは変えることができます・・・というところまでお話しましたね。

 

では続きです。

 

どの自律神経が働きやすいのか、それは自律神経の癖みたいなものです。

自律神経を調整して、「安全とつながり」の神経が十分に働くようになれば

ストレスがあっても冷静さを保つことができます。

一時的にイライラしたり落ち込んだりすることはあっても

より早く落ち着いた状態に戻って来ることができます。

 

癖にまではなっていなくても、「最近ちょっとイライラする」

「何となく不安」といったことは誰にでもあります。

そういう時でも、自律神経を調整することは役に立ちます。

 

さて、自律神経を調整するための実際の方法ですが、有名なものには

神経セラピストの浅井咲子さんが考案した5つの「神経エクササイズ」があります。

これはインターネット上でも公開されています。

 

①船の汽笛の音を出してみる、ぼー

②顔のパーツをぎゅーっと中央に寄せて集める

③両手をぐーぱーしてにぎにぎする

④口をとがらせて口呼吸

⑤周りをきょろきょろ見る

 

出典:やってみよう!「今ここ」神経系エクササイズ | YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=rAA7WJsDt6c&t=193s

 

詳細な説明は『「今ここ」神経系エクササイズ』(浅井咲子、梨の木舎)に譲りますが

①②⑤は「安全とつながり」の神経を刺激する動きです。

③④は軽い緊張と軽い弛緩によって、「戦うか逃げるか」の神経を鎮めます。

加速と減速を繰り返して、丁度よい速度に調整するイメージですね。

(同著者の『不安とイライラがスッと消える「安心のタネ」の育て方』(大和出版)には

全部で47の方法が紹介されています。より自分に合った方法を選べるのが嬉しいですね)

 

特殊な呼吸法を使うこともできます。

藤本昌樹さんが開発したボディコネクトセラピーの一技法である「BC呼吸」は

自律神経の興奮を落ち着かせる簡単で強力な方法です。

これもインターネット上でやり方が公開されています。

 

①楽な姿勢で椅子に座る

②膝の上に手のひらを上にして置く

③息を吸いながら、こぶしをギュッとつくり、息を一旦止める

④こぶしをゆっくり開きながら、息をゆっくり吐き、手のひらでゆっくりパーをつくる

 

出典:心的外傷後ストレス障害(PTSD;Post Traumatic Stress Disorder)/トラウマ関連の外来 | こころとからだ横浜クリニック

https://www.kokorotokarada-yokohama.com/service/trauma.html

 

神経エクササイズの③と④を組み合わせて強力にした感じでしょうか。(大雑把)

BC呼吸以外にも、合谷や足三里など、科学的に効果が検証された身体のツボが

紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

特別なエクササイズではなく、生まれ持った身体の調整機能を使うこともできます。

それは「あくび」です。

あくびをすると、脳内にたくさんの酸素が届けられ、脳の温度が下がります。

(文字通り、頭を冷やす効果があります)

あくび自体に脳幹を活性化させる効果があり、自律神経の機能も高まります。

ボディワーカーの藤本靖さんは、あくびを活用して自律神経を調整するエクササイズを提案しています。

 

出典:本当の“あくび”とは?自律神経が整う簡単エクササイズ | anan NEWS

https://ananweb.jp/news/245363/

 

リンク先を見ると分かりますが、これならちょっとした仕事の合間にできそうです。

 

いくつか紹介しましたが、全てに共通することは「身体を動かす」ということです。

心を落ち着かせるために、まずは身体を動かして自律神経を調整し、心に働きかけます。

ボトムアップ・アプローチというやつですね。(何やらかっこいい響き)

 

・・・な~んて、偉そうに述べましたが、実はこれって子どもたちは生活の中で

自然とやっていることなんです。

えっ。どうやって?

 

それについては、また次回お話します。

暮らしに役立つ「自律神経のお話」は、次回で最終回となります。

(山路)

 

※暮らしに役立つ「自律神経のお話⑤」へつづく

暮らしに役立つ「自律神経のお話③」

2021年12月06日(月曜日)

前回までのおさらいです。

 

前回は人間を、①安全運転タイプ、②高速運転タイプ、③低速運転タイプ、

④不規則運転タイプの4つに分けて説明しました。

 

そしてこういった特徴を、私たちは性格として捉えがちですが

実はそれは自律神経の状態かもしれない、というところまでお話しましたね。

 

では続きです。

 

自律神経は長年、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の2つで

バランスを取っていると考えられてきました。

ですが近年になって、自律神経は3つに分類されるという説が有力になってきています。

(詳しく知りたい方は「ポリヴェーガル理論」で検索してみてください)

 

1つ目は、腹側迷走神経という「安全とつながり」の神経です。

「安全とつながり」の神経が働いていると、周囲の人と協力して安全を守ることができます。

人間は元々助け合うことで繁栄してきたので、「人とのつながり=安全」なんですね。

人とのつながりは、その人自身の安心感や心の安定にもつながります。

つまり「安全とつながり」の神経が十分に働いている人が、①安全運転タイプです。

安全とつながり

 

2つ目は、交感神経という「戦うか逃げるか」の神経です。

動物は危険を感じた時、生き残りのために「戦うか逃げるか」を選択します。

ですが人間で「戦うか逃げるか」の神経が働くと、周囲の人と協力できません。

警戒モードに入り、その場の生き残りを重視した衝動的な行動を取ってしまいます。

つまり「戦うか逃げるか」の神経が働きやすい人が、②高速運転タイプです。

戦うか逃げるか

 

3つ目は、背側迷走神経という「凍りつき」の神経です。

動物は絶対絶命になると、身体を凍りつかせて仮死状態になります。

野生の動物は死んでいる生き物を食べないので、抵抗するよりも

生き残りの確率が上がるからです。

人間で「凍りつき」の神経が働くと、引きこもったりうつになったりします。

極端な場合には失神することもあります。

つまり「凍りつき」の神経が働きやすい人が、③低速運転タイプです。

凍り付き

 

じゃあ、④不規則運転タイプは?

これは複数の神経が混ざった状態です。

「安全とつながり」の神経がうまく働かず、「戦うか逃げるか」の神経と

「凍りつき」の神経が交互に、もしくは同時に働いているような状態です。

急に怒り出したかと思えば、次の瞬間には急に落ち込んだりします。

「安全とつながり」による丁度よい調整が働かないので、急発進と急停車を繰り返す、

もしくはアクセルとブレーキを同時にベタ踏みしたような状態になってしまいます。

これでは身体も軋むし、心も軋みますよね。

 

先にも説明しましたが、こういった特徴を私たちはその人の性格として捉えがちです。

しかし実際には、自律神経の状態です。性格というよりは、むしろ体質に近いものです。

そして、体質は変えることができます。

 

『心の体質改善』(伊藤絵美、アスク・ヒューマン・ケア)という本がありますが

自律神経という体質を変化させることは、私たちの性格、もっと言うと「心」を

変化させることにつながります。

 

では、自律神経の状態をどうやって変えていくのか。

そこらへんのお話を、また次回したいと思います。

(山路)

 

※暮らしに役立つ「自律神経のお話④」へつづく

暮らしに役立つ「自律神経のお話②」

2021年11月29日(月曜日)

さてさて、タイトル倒れになった前回の教訓を踏まえて

今回は初っ端から本題に入っていきましょう。

 

「自律神経」と急に言われても、あまりピンと来ない方もいるかもしれません。

一方で、「自律神経失調症」などの言葉を時々耳にする方もいるでしょう。

 

一言で言うと、自律神経というのは、「身体の状態をオート(自律)で

丁度よく調整してくれる神経」のことです。

逆に言うと、自律神経失調症というのは、「身体の状態をオートで丁度よく

調整してくれない状態」と言うことができます。

 

朝起きたら身体は自然と活動モードに移行して、夜になったら徐々に

睡眠モードに移行します。

走ったら汗をかき、呼吸も鼓動も早くなります。寒い時には

身体が震えて体温を上げようとします。

全て身体のオート調整機能です。

 

逆に、朝起きても動けない、夜になっても目がさえて眠れない。

何もしていないのに汗をかく、息が上がる、鼓動が早くなる。

こんな状態なら、オート調整機能がうまく働いていません。

 

元気が出ないのでエナジードリンクを飲んで仕事に向かう。

眠れないので睡眠改善薬などを飲んで眠る。

そんな無理な生活をしている方もいるかもしれません。

自律神経(オート)というよりは、むしろ他律神経(外部コントロール)です。

 

さて、突然ですが人間は4つのタイプに分けられます。(突然が過ぎる)

 

・・・いやいや、実際には4つになんて分けられませんよ?(当たり前)

ただ、4つに分類して考えると分かりやすいですよ、というお話です。(便宜的にね)

 

では、4つのタイプを車のスピードメーターで表現してみましょう。

 

①安全運転タイプ

安全運転タイプの人は、状況に応じて丁度よい速度で走ります。

多少不安になったりイライラすることがあっても、逆に落ち込んだり

クヨクヨすることがあっても、基本的に安全運転ゾーンから外れることがありません。

自分をうまく調整して周りと協力したり、人に道を譲ったりする余裕があります。

安全運転タイプ

 

②高速運転タイプ

高速運転タイプの人は、人よりも速いスピードで走りがちです。

いつもどこか不安だったりピリピリしたりしていて、ちょっとしたことで

心のアクセルを踏み込んで興奮してしまいます。

その結果、焦って自己コントロールを失ったり、周りと衝突したりしてしまいます。

高速運転タイプ

 

③低速運転タイプ

低速運転タイプの人は、人よりも遅いスピードで走ります。

普段から気分が沈みがちか感情表現が控えめで、ちょっとしたことで

心の急ブレーキを踏んでしまいます。

その結果、エンストして動けなくなったり、人を避けて引きこもったりします。

一人で動けなくても、あまり助けを呼ぼうとはしません。

低速運転タイプ

 

④不規則運転タイプ

不規則運転タイプの人は、ある瞬間には感情が高ぶったかと思えば

次の瞬間には感情が沈み込んだりして、心の急発進と急停車を繰り返します。

その結果、無理なアップダウンで心がギーギーと悲鳴を上げます。

最悪、コントロールを失って事故(トラブル)を招いてしまうかもしれませんね。

不規則運転タイプ

 

さて、以上の4つの中にピンと来るものはあったでしょうか?

 

「私はこのタイプに近いなぁ」

「あの人ってこのタイプかも」

 

そんなふうに思った方もいるかもしれません。

もしピンと来るものが無くても、安心したり、不安になったり、落ち込んだり

自分の心の変化をスピードメーターで表現できることに気づかれたと思います。

 

恐らく、ほとんどの人は安全運転タイプを基本として、ちょっと高速運転寄りだったり

低速運転寄りだったり、不規則運転寄りだったりするのでしょうね。

 

そしてこういった特徴を、私たちは多くの場合、「性格」として捉えています。

 

「優しい」「温和」「心配性」「怒りっぽい」「暗い」「消極的」「気分屋」

 

・・・こういった言葉で表現するかもしれません。

しかし、もしこういった性格(固定化して変わらないもの)の多くが

実は自律神経の状態(状況によって変化するもの)なのだとしたら、どうでしょうか?

 

次回はそういったお話をしたいと思います。

(山路)

 

※暮らしに役立つ「自律神経のお話③」へつづく