弘済 みらい園・のぞみ園の日常を綴ります。
暮らしに役立つ心理学のお話①
2022年03月07日(月曜日)
皆さん、こんにちは。
暮らしに役立つシリーズの第2弾が4回シリーズでスタートします!
今回のシリーズでは、子どもを育てておられるお母さん、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃんをはじめ、子どもに関わっておられる皆さんに向けて、心理学の視点から何かお役に立つことを伝えていきたいと思っています。
子どもを育てることは、かわいいと感じたり、成長に喜びを感じるだけでなく、大人の思い通りにはいかないことばかりで、イライラしたり、腹が立つこともたくさんありますよね。
そんな時、子どもの心の中で何が起こっているのか知ることができると少し楽になるかもしれません。
日々頑張っておられる皆さんが、少しでもホッとできるような内容にしたいと思っています。
それでは『暮らしに役立つ心理学のお話』はじめていきましょう♪
1回目は、『愛着』についてのお話しです。
『愛着』というのは、特定の大人(主には身の回りのお世話をしてくれて、泣いたら気持ちに応えてくれる大人)との間にできる情緒的な絆(気持ちと気持ちのつながり)のことです。
愛着理論を創ったイギリスの精神科医のボウルビィは、生後6カ月から2、3歳の間に、いったん愛着ができた大人との長期間の別れを経験し、その後代わりになる愛着対象に出会わないと、心の発達や対人関係の発達に大きな影響を及ぼすと言っています。
『愛着』って子どもの成長にとって大事って言われているし、乳幼児健診でも、『愛着』ができているかどうかの目安に「人見知りはしますか」って絶対聞かれるし、子育てをしていると、自分と子どもの間での愛着関係がちゃんとできているかどうかって心配になりますよね。
皆さんと『愛着』について考えていくために、私が犬の散歩のときに出会った、安定した愛着関係ができているなと思った親子のエピソードをお話します。
昨年の秋頃のことです。私は朝、犬を連れて公園を散歩していました。
公園には幼稚園のバスを待っている数人の子どもたちがいました。
子どもたちは、地面にたくさん落ちている落ち葉を使って遊んでいました。
お母さんたちは、子どもたちと少し離れたところで話に夢中でした。
私が犬を連れて子どもたちに近寄っていき、「何してるん?」と聞くと子どもたちは口々に
「バック作ってるねん」
「持つところもつけたで」
「バック持って買い物に行くねん」
「犬や!なんて名前なん?」
と私に話しかけてきました。
私と何度かやりとりした後で、幼稚園のバスがやってきて、お母さんに呼ばれました。
子どもたちは、遊びをやめて私に「バイバイ」と言って、走っていきました。バスに乗ってお母さんと別れるときもお母さんに笑顔で手をふって幼稚園に行きました。
このエピソードの中で、安定した愛着関係ができていることが分かるポイントを3つあげてみていきたいと思います。
1つ目は、お母さんから離れたところで、遊びに夢中になっている姿です。
このような子どもの姿から、子どもの心の中に、何か困ったことや怖いことがあれば、お母さんが助けてくれるから大丈夫という、安定したお母さんイメージができあがっていることが分かります。
子どもの心の中によいお母さんイメージがある状態を、心理学では対象恒常性といいます。
よいお母さんイメージが心の中にいて、お母さんから離れたところで、不安になったり、怖くなったときなどに、これまでお母さんが自分にしてくれたように、自分で自分のことを、大丈夫とはげましたり、なぐさめたりできるようになっている状態のことです。
対象恒常性ができている子どもは、それまでにお母さんから、身の周りのお世話や気持ちに応じてもらう経験を重ねて、安定した愛着関係ができているだろうと想定できます。
2つ目は、知らない人(私)が話しかけて、私との会話を楽しめているところです。
その時の私が、例えば全身黒い服を着て、サングラスをかけて、マスクをして、低い声で「おい、なにやってる!」と話しかけているのに、普通に話すというのは、安心な人かそうでない人かを判断できていないので心配です。
しかし私はその時、犬を連れて散歩しており、怪しい服装ではなかったので、まず子どもたちは、この人は怖い人ではない、と判断できているのです。
また、お母さんとの愛着関係ができていると、愛着関係ができている大人以外の人に対しても、人はたいてい困ったときには助けてくれる、と人に対しての信頼感があるので、知らない私が話しかけても、警戒しすぎることなく、会話を楽しむことができたと言えます。
3つ目は、お母さんに呼ばれたときに、素直に遊びをやめてお母さんの要求に従ったことです。
愛着関係ができていないと、親のしつけがうまくいかないことが多くあります。
例えば、トイレットトレーニングが4、5歳になってもうまく進まない子の中に愛着の課題が残っている子どもがいます。
愛着関係ができているということは、赤ちゃんの頃から、泣いたらおしめをかえてもらったり、ミルクをもらったり、痛いね、怖いね、と気持ちにもこたえてきてもらって、養育者との間でたくさんいい経験をしてきていることになります。
悪い経験よりもいい経験が上回っていると、たいていしつけはうまくいきます。
子どもは大好きな親から言われたことは聞いて、親を喜ばせたいと思うし、いつも受け止めてくれている親のいうことは、少しの嫌なことは我慢しようと思えるからです。
『愛着』って、子どもの人に対するイメージや、人との関わり方や、子どものしつけにも関係してくるんですね。
第1回の『愛着』のお話はここまでです。
次は第2回でまたお会いしましょう!(^^)!
(平岡)
暮らしに役立つ「自律神経のお話④」
2021年12月13日(月曜日)
前回までのおさらいです。
自律神経は3つに分かれます。「安全とつながり」の神経、
「戦うか逃げるか」の神経、「凍りつき」の神経です。
「安全とつながり」の神経が働いていれば①安全運転タイプ、
「戦うか逃げるか」の神経が働きやすければ「高速運転タイプ」、
「凍りつき」の神経が働きやすければ③「低速運転タイプ」です。
④不規則運転タイプは、「戦うか逃げるか」の神経と「凍りつき」の神経が
交互に、もしくは同時に働いている状態です。
こういった特徴を私たちは性格として捉えがちですが、実際には自律神経の状態です。
そしてそれは変えることができます・・・というところまでお話しましたね。
では続きです。
どの自律神経が働きやすいのか、それは自律神経の癖みたいなものです。
自律神経を調整して、「安全とつながり」の神経が十分に働くようになれば
ストレスがあっても冷静さを保つことができます。
一時的にイライラしたり落ち込んだりすることはあっても
より早く落ち着いた状態に戻って来ることができます。
癖にまではなっていなくても、「最近ちょっとイライラする」
「何となく不安」といったことは誰にでもあります。
そういう時でも、自律神経を調整することは役に立ちます。
さて、自律神経を調整するための実際の方法ですが、有名なものには
神経セラピストの浅井咲子さんが考案した5つの「神経エクササイズ」があります。
これはインターネット上でも公開されています。
①船の汽笛の音を出してみる、ぼー
②顔のパーツをぎゅーっと中央に寄せて集める
③両手をぐーぱーしてにぎにぎする
④口をとがらせて口呼吸
⑤周りをきょろきょろ見る
出典:やってみよう!「今ここ」神経系エクササイズ | YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=rAA7WJsDt6c&t=193s
詳細な説明は『「今ここ」神経系エクササイズ』(浅井咲子、梨の木舎)に譲りますが
①②⑤は「安全とつながり」の神経を刺激する動きです。
③④は軽い緊張と軽い弛緩によって、「戦うか逃げるか」の神経を鎮めます。
加速と減速を繰り返して、丁度よい速度に調整するイメージですね。
(同著者の『不安とイライラがスッと消える「安心のタネ」の育て方』(大和出版)には
全部で47の方法が紹介されています。より自分に合った方法を選べるのが嬉しいですね)
特殊な呼吸法を使うこともできます。
藤本昌樹さんが開発したボディコネクトセラピーの一技法である「BC呼吸」は
自律神経の興奮を落ち着かせる簡単で強力な方法です。
これもインターネット上でやり方が公開されています。
①楽な姿勢で椅子に座る
②膝の上に手のひらを上にして置く
③息を吸いながら、こぶしをギュッとつくり、息を一旦止める
④こぶしをゆっくり開きながら、息をゆっくり吐き、手のひらでゆっくりパーをつくる
出典:心的外傷後ストレス障害(PTSD;Post Traumatic Stress Disorder)/トラウマ関連の外来 | こころとからだ横浜クリニック
https://www.kokorotokarada-yokohama.com/service/trauma.html
神経エクササイズの③と④を組み合わせて強力にした感じでしょうか。(大雑把)
BC呼吸以外にも、合谷や足三里など、科学的に効果が検証された身体のツボが
紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。
特別なエクササイズではなく、生まれ持った身体の調整機能を使うこともできます。
それは「あくび」です。
あくびをすると、脳内にたくさんの酸素が届けられ、脳の温度が下がります。
(文字通り、頭を冷やす効果があります)
あくび自体に脳幹を活性化させる効果があり、自律神経の機能も高まります。
ボディワーカーの藤本靖さんは、あくびを活用して自律神経を調整するエクササイズを提案しています。
出典:本当の“あくび”とは?自律神経が整う簡単エクササイズ | anan NEWS
https://ananweb.jp/news/245363/
リンク先を見ると分かりますが、これならちょっとした仕事の合間にできそうです。
いくつか紹介しましたが、全てに共通することは「身体を動かす」ということです。
心を落ち着かせるために、まずは身体を動かして自律神経を調整し、心に働きかけます。
ボトムアップ・アプローチというやつですね。(何やらかっこいい響き)
・・・な~んて、偉そうに述べましたが、実はこれって子どもたちは生活の中で
自然とやっていることなんです。
えっ。どうやって?
それについては、また次回お話します。
暮らしに役立つ「自律神経のお話」は、次回で最終回となります。
(山路)
※暮らしに役立つ「自律神経のお話⑤」へつづく
暮らしに役立つ「自律神経のお話③」
2021年12月06日(月曜日)
前回までのおさらいです。
前回は人間を、①安全運転タイプ、②高速運転タイプ、③低速運転タイプ、
④不規則運転タイプの4つに分けて説明しました。
そしてこういった特徴を、私たちは性格として捉えがちですが
実はそれは自律神経の状態かもしれない、というところまでお話しましたね。
では続きです。
自律神経は長年、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の2つで
バランスを取っていると考えられてきました。
ですが近年になって、自律神経は3つに分類されるという説が有力になってきています。
(詳しく知りたい方は「ポリヴェーガル理論」で検索してみてください)
1つ目は、腹側迷走神経という「安全とつながり」の神経です。
「安全とつながり」の神経が働いていると、周囲の人と協力して安全を守ることができます。
人間は元々助け合うことで繁栄してきたので、「人とのつながり=安全」なんですね。
人とのつながりは、その人自身の安心感や心の安定にもつながります。
つまり「安全とつながり」の神経が十分に働いている人が、①安全運転タイプです。
2つ目は、交感神経という「戦うか逃げるか」の神経です。
動物は危険を感じた時、生き残りのために「戦うか逃げるか」を選択します。
ですが人間で「戦うか逃げるか」の神経が働くと、周囲の人と協力できません。
警戒モードに入り、その場の生き残りを重視した衝動的な行動を取ってしまいます。
つまり「戦うか逃げるか」の神経が働きやすい人が、②高速運転タイプです。
3つ目は、背側迷走神経という「凍りつき」の神経です。
動物は絶対絶命になると、身体を凍りつかせて仮死状態になります。
野生の動物は死んでいる生き物を食べないので、抵抗するよりも
生き残りの確率が上がるからです。
人間で「凍りつき」の神経が働くと、引きこもったりうつになったりします。
極端な場合には失神することもあります。
つまり「凍りつき」の神経が働きやすい人が、③低速運転タイプです。
じゃあ、④不規則運転タイプは?
これは複数の神経が混ざった状態です。
「安全とつながり」の神経がうまく働かず、「戦うか逃げるか」の神経と
「凍りつき」の神経が交互に、もしくは同時に働いているような状態です。
急に怒り出したかと思えば、次の瞬間には急に落ち込んだりします。
「安全とつながり」による丁度よい調整が働かないので、急発進と急停車を繰り返す、
もしくはアクセルとブレーキを同時にベタ踏みしたような状態になってしまいます。
これでは身体も軋むし、心も軋みますよね。
先にも説明しましたが、こういった特徴を私たちはその人の性格として捉えがちです。
しかし実際には、自律神経の状態です。性格というよりは、むしろ体質に近いものです。
そして、体質は変えることができます。
『心の体質改善』(伊藤絵美、アスク・ヒューマン・ケア)という本がありますが
自律神経という体質を変化させることは、私たちの性格、もっと言うと「心」を
変化させることにつながります。
では、自律神経の状態をどうやって変えていくのか。
そこらへんのお話を、また次回したいと思います。
(山路)
※暮らしに役立つ「自律神経のお話④」へつづく